
生命のりんご
2019






いらっしゃいませ!店長です。果物売り場へようこそ。今回は「りんご」のアイデアと、着想のきっかけとなった食材の記憶をご紹介いたします。
文化の記憶と状態変化の記憶
今回はりんごの2つの記憶に注目しました。
1つ目は文化の記憶です。りんごは昔から生命の象徴として、絵画や物語に登場してきました。このようにりんごには生命の象徴という記憶があります。
2つ目は状態変化の記憶です。ここに青りんごがあるとします。青りんごは時間がたつにつれてだんだん赤くなります。さらに時間がたつと、熟れてきて腐りはじめます。そして最終的には朽ちてなくなります。このように、りんごには時間の経過によって状態が変化するという記憶があります。そして、この時間の経過というものは生命とは切っても切り離せない存在です。これら二つの記憶から着想したアイデアが「生命のりんご」です。
生命のりんご
大きな空間にりんご型の巨大な金属製フレームを準備します。フレームの中心には芯とヘタを表現しています。
そこに、人々が緑の植物をたくさんかかえてやってきて、フレーム全体を覆い隠すように植物を植えていきます。
フレーム全体に植物を植え終えると、青りんごが姿を現しました。 人が手を加えるのはここまでです。ここから先は時間の経過とともに、このりんごの変化をじっくり見守っていきましょう。
さて、数日が経過しました。青々しかった植物がさらに生い茂り、次第に花を咲かせてきました。それはまるで色鮮やかな食べ頃のりんごです。 花のいい香りに誘われて蝶々などの生き物も集まってきているようです。
さらに数日が経過しました。花は次第に枯れてきて、まるで食べ頃を過ぎたりんごのような姿になってきました。生き物もいなくなり次第に生命の終わりが近づいているようです。
さらに数日後。植物は枯れ果て、まるで食べ終わった後のりんごのように芯だけが残った状態となりました。まさに生命がかけぬけた数十日間でした。もしかしたら地面に落ちた種からは、すでに新しい生命がはじまっているかもしれません。
おわりに
食材をテーマとして扱う当店において、りんごは、最も有名な食材であるからこそ扱いの難しいお題であると考えていました。そのためアイデアの方向性は、なるべくメッセージ性の高いものにしようと考えました。そこで生命という文化の記憶に注目し、状態変化の記憶を生かして生命を感じてもらえるようなアイデアにしました。「生命のりんご」は未実現のアイデアです。このアイデアはぜひいつか実現したいと思っております。ご意見・ご感想、もし一緒に実現してみたい方いましたら、ぜひご連絡ください。
それでは、引き続き当店の食材アイデアをごゆっくりお楽しみくださいませ。